Ｍｙ ｏｎｅ ａｎｄ ｏｎｌｙ ＲＡ－ＭＥＮ

近所に新しいラーメン屋がオープンしたのだが、
その店が何だかなぁな感じなのである。

まず、店舗が地下１階にある。
何か勝算があるのか知らないが、
飲食店で地下はかなり不利だ。
しかも営業時間は１８時から２６時。
こだわりの営業形態だ。
看板は丸字でファンシー、
だがメニューは手書きでそっけない、
写真はなく、どんなラーメンなんだか全く想像できない。

そして何よりなのだが、品目が無駄に多い。
醤油、塩、味噌、つけめん、タンメン、何でもある。
なぜわざわざこんな変わった形態でオープンするのに、
勝負の一品に絞らないんだ。
いったいこの店は何で勝負する気なのか。
サービスエリアのラーメン屋なら分かるけど、
何でもありますは何もないのと同じじゃないか。

何か不気味な店だなと思いながら通り過ぎ、
地下道をくぐりながら考えた。
何かに似てるよ、その感じ。
何がしたいんだよお前って感じ。
それ、おれの音楽じゃないか。

弁護すると、あのラーメン屋の店主も別に悪人ではないのだ
たぶん。
ただ、頭が悪いだけだ。
おれも悪意はない。
特別な意志もなかっただけだ。

おれの勝負の一品って何だ。
地下道を抜けて別のラーメン屋に行き、
缶ビールを飲みながら考えた。
結論はもちろん出なかったが、勝負だよ勝負、とは思った。

本とCDとビデオテープ

めったに僕を誉めない彼女が誉めてくれたことがある。
曰わく、僕は古本屋で１００円箱の掘り出しがうまいと。

さすがだ。
僕のことをよく分かっている。
誰かそのことを誉めてくれないかと待っていたのだ。
こないだの廃校フェスでライブそっちのけで
１００円箱を漁っていた不届き者、
それが僕だ。

些細なことでも誉められるのはいい気分なので、
それ以来いっそう特売コーナーに目をやるようになった。
CD、本は基本として最近好きなのがビデオテープである。
レンタル落ちのビデオを１００円で掘る。
けっこう楽しい。

重いし、ケースはかさばるし、画質は荒い。
だが、何か愛しいビデオテープ。

だからこそ、なのかもしれない。
もう滅びゆくものだから、
時代遅れだから、
不格好でスマートじゃなくて便利でもないから、
可愛いのかもしれない。

最近、我が家に保護したビデオたち。

最初に買ったのが『恋する惑星』。
『カルフォルニア・ドリーミン』をBGMにひとり踊るフェイ・ウォン！
胸が苦しくなるほど可愛い。

喫茶いばら

今、僕のささやかな夢は喫茶店を書斎代わりにすることだ。
そもそも書斎なんて持ったこともないが、
書斎、いい響きだ、大人って感じがする。

しかし僕はマクドナルドにいる。
今日もいる。
１２０円のコーヒーをおかわりする。
有線に嫌気がさして耳栓を購入したり、
感動して泣きそうになったりする。

マクドで作業するのは割と快適だし、
禁煙席と喫煙席を行き来すれば頭も痛くならないし、
何といっても２４時間やってるし、
そして、店員の感じが良いことが多い。
スマイル０円はだてじゃない。

いつか、あれはどこだったか、都心のどっか知らない街のマクドだ。
ランチタイムのくそ忙しそうな中、ハンバーガー１個を買った僕に
恋人にしか見せないようなとびきりの笑顔を見せてくれたワタナベマリナ（仮称）さん！
僕はあれ以来マクドナルドのファンです。

しかし、ああ喫茶店。
あの不思議な空間。
売ってるのはコーヒーか？
時間か？
サンドイッチか？
静けさか？
読み古された漫画本か？
そこに積もった記憶たちか？
曖昧なものを曖昧なまま愛す。
大人って感じじゃないか。

僕の夢想するシーン。
「あら、○○さん。先生でしたらきっと『いばら』にいらっしゃいますわよ。」

僕とそれとの間には、
チョモランマ級の断崖があろうとも、
憧れてしまう男の性よ。

できることから始めよう。
まずは彼女の言葉使いを悔い改めさせ、
おれを先生と呼ばせ、
それで、、、喫茶店に通うために貯金するか。